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温暖な気候の東紀州地域にある自然林は、常緑の樹種が大部分を占めています。シイ、カシ、クス、ツバキ、モチなど、厚くて光沢のある葉を持った照葉樹が中心となって作られる森です。 |

鬱蒼(うっそう)と茂る自然林の中を通る始神峠の江戸道。辺り一帯が、鮮やかな葉の色で染まっているかのようです。 |
この地域の自然林にも、きれいな花を咲かせる木が何種類かありますが、中でも目を引くのは、春のオンツツジと冬のヤブツバキでしょう。鮮やかな赤やピンク色の花をたくさん咲かせて、古道を鮮やかに彩ってくれます。
(下左:曽根次郎坂太郎坂を彩るオンツツジ/下右:猪ノ鼻水平道で満開だったヤブツバキ) |
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5月上旬、尾鷲市三木里にて。
まだら模様になっている山の上の方が自然林。単一の緑色をしているのは、ヒノキの人工林。この時期、両者の違いがはっきりとわかります。 |
照葉樹が多いこの地域の自然林では、紅葉はあまり期待できません。ヤマハゼ、ホオ、トチといった落葉広葉樹も生えているので、それらは色づきますが、山のところどころに点々とある程度。しかも、日中と夜間の気温差があまり大きくないために、きれいな紅葉は期待できません。
秋の紅葉に替わって楽しめるのが、春から初夏にかけての山の色です。山の木々が新しい芽を出して花を咲かせる4月中旬〜5月、白っぽいもの、赤っぽいもの、うぐいす色のもの・・・照葉樹は独特の色の花や新芽を出して、山を見事なまだら模様に染め上げます。
俳句の春の季語に「山笑う」というのがあります。春の山の草木が一斉に若芽を吹いて、明るい感じになる様子のことを言うのですが、こういった風景のことなのかもしれません。 |
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5月上旬、熊野市二木島周辺にて。
白色の部分は、シイの花。ひと目でわかります。
木によって葉・花の色も違えば木の高さもバラバラなので、遠くから見ると凸凹のまだら模様。 |
人工林の中を通る部分が多い熊野古道ですが、自然林の中を通っている場所もあります。きれいに手入れされている人工林と異なり、自然林では、少しでも光を受けて生き延びようと、競うように木々が茂っています。
そんな自然林の中を歩くと、ドングリが落ちていたり、ツツジが咲いていたり、石畳が埋もれるくらいに落ち葉が積もっていたりと、人工林の中の道を歩くのとは違った楽しさがあります。
そんな自然林の中の風景は、道が作られたときから、そこにあった風景なのかもしれません。 |
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冬の荷坂峠。落葉樹が比較的多いこの峠道では、落ち葉が道に積もってフカフカの絨毯みたいになっていることも。 |
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照葉樹の代表的なもののひとつに、ウバメガシがあります(左画像は、その幹)。暖かい地方の海岸近くに多く生えるカシの一種で、東紀州の山でも普通に見ることができる種類です。このウバメガシ、高級炭である備長炭の原料となる木です。
ツヅラト峠や猪ノ鼻水平道に見られる釜跡(下画像は、ツヅラト峠にある釜跡)が示すように、この地域でも昔は炭焼きが普通に行われていました。かつてはその釜の周辺に、ウバメガシをはじめとして、炭の原料となる木が多く生えていたのでしょう。 |
自然林として存在している照葉樹林ですが、人の手が入っていない原生林とは限りません。炭の原料として木々の切り出しが行われ、その場所に使える木がなくなったら次の場所へ移動する。いずれ、木を切った場所で新たな木が生えて成長してきたら、再び切って炭などに利用されていく・・・。ヒノキなどの人工林と同様に、世代を越えた人と森の関わりが自然林にもあったはずで、かつての日本ではごく普通のことでした。
熊野古道を歩いていて炭焼き釜の跡を見つけたら、そんな人と森の関わりについて想像してみてはいかがでしょう。 |
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