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熊野古道協働会議 第2回総会 2004年7月4日

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紀伊山地の参詣道ルールについて|記念講演(イコモス理事 宗田好史氏)

  最近の旅行
 四国のお遍路さんについて、JTBと一緒に調査をしたことがあるのですが、最近はすっかり「人を送る旅」になっているんです。日本は高齢化・長寿命化が進んで、親が死ぬのは80代、90代で子どもは50代、60代。50代や60代になるとそうそう兄弟が集まる機会もないし、法事だけで親との別れを済ませるのは寂しいということで、兄弟でお遍路さんを回るのです。父母のことをしみじみ語り、悼みながらも、兄弟でのんびりと美味しい料理を楽しむ。真面目にお遍路さんをしているわけではないのですが、これは旅館にとっては良いお客さんですよね。
 また、京都に来る観光客、かつては10代、20代、30代が多かったのですが、最近は50代がかなりの数を占めています。そんな年代の人たちにとって、修学旅行と同じようにバスでいくつかの名所を回る旅が求められているのでしょうか?ここでも旅行のスタイルが変わってきているのです。
 「紀伊山地の霊場と参詣道」にも、「心の旅」という側面が求められるのは間違いないところでしょう。そのためにも、3つの価値があるということをしっかり認識する必要があります。(1)聖なる山、霊場としての価値、山岳信仰 (2)自然を崇拝する、神聖性を見いだす文化 (3)浄土・よみがえりの地としての山岳文化 ですね。
 
  海外の例〜道の文化遺産
 世界遺産登録されている巡礼道として、スペインの「サンティアゴ・ディ・コンポステイラ」があります。この道は、巡礼があるからこそ生きている道、文化遺産です。まさに、歩いていく中で神に会うことのできる道なのです。巡礼する者だけでなく、地元の人たちも巡礼者をもてなして功徳を積むことで、巡礼者と一緒に聖地へとつながっていくというのです。
 さて、ここで考えなくてはならないのは、「参詣道における巡礼とは何か?」ということです。
 熊野古道だからこそある、巡礼者との交わり、結縁(けちえん)とでも言うべきものがあるはずです。それは私のような外部の者ではなく、この地域に住んできたみなさんでないとわからないはずです。それを言葉の知識として伝えるのではなく、感じさせることが求められているのです。
 
  道の保存
 「紀伊山地の霊場と参詣道」は、日本で初めての道の文化財なので、実はどうすれば保全していけるのかは分かっていません。これは世界的にも同じことですが。
今回、道がコアゾーンでその両脇50mがバッファゾーンになっていますが、これで十分だとは誰も思っていないのです。三重、和歌山、奈良の三県が2004年登録を目指して動いたと言うこともあって、とりあえず道として保全できるであろう範囲が登録されたに過ぎません。熊野の自然、信仰の文化を守っていくためには、これで十分とは言えないでしょう。だからこそ、イコモスからの意見として保全のための管理計画を作るように、と言わせていただいているのです。
 こういった道の遺産管理計画については、イタリアが先行しています。考古学公園アッピア街道というものがありますが、ここには、道としての文化的景観を守るために都市計画に盛り込まれています。おかげで、ここにはキリスト教徒が求めるものが、今でも残されていると言います。
 来る人が、巡礼、信仰、文化を深く理解するために必要なものは何か?石畳だけではない、王子跡だけではない、何かがあるはずなのです。
幸いなことに、熊野古道アクションプログラムの中には「現代の巡礼 熊野古道ツーリズム」というのが盛り込まれています。今さら私が言うことでもないかもしれませんが、いくつかのポイントを話しておきたいと思います。
(1)地元民がイニシアティブを持って、観光ルートを決めること
 当然ですが、満足に分かっていない旅行会社などが、本当の価値を知るためのルートを組めるはずがありません。
 より深く知ろうとする人たちを優先して、人と人との交流を大切にしていくこと。観光バスでたくさんの人が来るでしょうが、そういった人たちは本当の文化、信仰を求めているとは考えにくい。単なる観光ではなく、深く知ろうとしている人たちを優先的に交流していくことで、広がっていくことでしょう。未来永劫、この文化遺産を残していくためには、それが必要です。
(2)観光振興は、文化振興のため。
 観光は経済的な効果をもたらすでしょうが、経済効果自体が目的ではないのです。大切なことはこの地域で守られてきた文化を守り伝えていくことであり、観光振興の効果は文化振興に利用されなくてはなりません。それこそが、より多くの人に文化を伝え広めていくことにつながります。
(3)観光=人の交流、かつての結縁
 先人達の作り上げた文化を、この地域が受け継いでいるはずです。それをやってくる人たちと交流することで伝えること、それが熊野古道の観光であるはずです。
最後に、大切なのは地元の人たちがしっかりすることです。地元の人たちが価値を理解していないと、文化的景観は残りません。 
 
  ページ作成者の個人的感想
 熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されました。これは日本にとっても、三重県にとっても、そして熊野古道などのある地元地域にとっても、大変意義のあることです。
 しかし、お祭りムードとは打ってかわって、真剣な議論が行われた会議、そして熊野古道の今後について大きなヒントを分かりやすい言葉で話してくださった記念講演。
 世界遺産登録がスタート。これからの地元での地域づくりに目が離せないと感じました。
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