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松本峠を毎日のように掃除している人がいると聞いて、2002年9月中旬、熊野市の鍛冶本さんを訪ねました。
思っていた以上に高齢の方で、 年齢は88歳。さすがに現在は草刈に出ることはないということでした。
どんな活動をされてきたのか、お話しを聞かせていただきました。
鍛冶本 英雄さん(自宅にて) |
松本峠の草刈を始めたのは約30年前。
14才から働き続けてきたお米屋の親方が、息子夫婦の家へ引っ越すことになり、お店と田んぼを引き継ぎました。(今では息子さんに譲られた米穀店は、この引き継いだお店が続いているものです。)
その田んぼが松本峠の頂上近くにあったので、田んぼの手入れのために頻繁に峠を歩いていました。鍛冶本さんによれば、当時はトンネル(鬼ヶ城トンネル)がなかったため、峠を隔てた磯崎や大泊の人たちが荷物を背負って峠を越えていたそうです。生活道としてしっかり使われていたんですね。
人が歩いていたので草が生い茂るわけではなかったのですが、やはり道端や石畳のすき間から草が生えていたそうです。そして自分が使う道ということで草を刈っていたのが始まりだったそうです。 |
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そんな話を自宅で聞いているうちに、頂上近くの田んぼ(田んぼだった場所)へ案内してくれることに。
高齢でもあるので大丈夫かと心配でしたが、しっかりとした足取りでテクテクと峠を歩いて案内して下さいました。
木本側登り口から50mほど歩いた、七里御浜の展望が良い場所。「ここからの景色が素晴らしいんじゃ。」と言いながら案内して下さいました。 |
頂上付近の田んぼはそれほど収穫があったわけでもないので、間もなく木を植えました。植えた木の手入れでやはり日曜日ごとに峠を歩いて、その際に草を刈っていたと言います。(実際に現地まで案内してもらいました。確かに石積みがあってかつて田んぼだったことがわかりました。) |
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松本峠を登る鍛冶本さん。とても88才とは思えない足取りでした。
「この道の脇に草がたくさん生えていて、それを草刈機で刈っていた」とか、「この辺りはミョウガがたくさんあって・・・」とか「この石はこっちにあったけどいつやらの大雨で反対側へ転がった」・・・。
そんな話をしながら案内して下さいました。 |
そうやって峠の道をきれいにしているうちに、30年にもなったそうです。一言で30年と言っても、すごい年月ですよね。
草刈を始めたきっかけは、「自分が使う道をきれいにしたい」という思いだそうです。体を動かすことは健康にも良いので、自分から進んで取り組んできたと言います。
そして自分がきれいにした道を人が歩いてくれる、きれいだと喜んで歩いてくれる、それが嬉しくてまた草刈をする。
そんな素朴な気持ちがあって、誰に頼まれたわけでもない気楽さも手伝って、30年にわたって道の草刈を続けられたのだと言います。 |
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松本峠の頂上まで来て一休み。
昔はここに茶屋があって、鍛冶本さんが田んぼを引き継いだ頃には廃屋として残っていたと言います。
田んぼは頂上脇の細い山道を歩いて3分ほどの場所にありました。
峠道を歩いている途中も、道に落ちている枝などを脇へ放り投げ、きれいにしながら歩いていました。 |
今ではさすがに草刈機を持って登ることは出来ません。そして松本峠の道の草刈は、熊野市が業者に委託しています。(かつて鍛冶本さんが自主的にやっていたことを、今では市がお金を払ってやっています。)
草刈を始めたのは、熊野古道として人気が出るずっと以前。町に住んでいる人の、自分が使う道へのちょっとしたこだわりが、松本峠の道を守ってきたのです。
熊野古道人気で、今では松本峠にもたくさんの人が訪れます。鍛冶本さんは「今はたくさん人が歩きよるで、草もあんまり生えんわ。」と嬉しそうに話しながら歩いていました。
いつまでも松本峠を見守っていて欲しいものです。 |
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