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2006/02/28
雨もまた良し、二木島・逢神坂峠と波田須
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熊野市(旧熊野市、旧紀和町) ) |
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朝から空はどんより曇り。午後からの降水確率は70%。昨年から世界遺産登録された熊野古道を北から歩き始め、ずーっと晴天に恵まれてきたが、前回あたりから天気の心配をするようになった。しかし雨の多い東紀州。「雨の峠もまた良し」と、雨具を用意して出発。
二木島駅を出発して民家の間を通って歩き始める。今回その距離は短い方かもしれないが、古道を歩くには「え?これは個人宅の敷地内?」というところや、家の中が見えそうな軒先を通ることがある。いかにも「古道歩き」というスタイルでなければ、かなり勇気がいる。今回は語り部さんもついているので「鬼に金棒?」で歩かせてもらった。
民家を抜けてから国道までの道は歩く人も少ないようで、道はあまり整備されていない。人が住まなくなって久しい荒れた家があった。茶碗やカレンダーがそのままになっており、漂ってくる「ちょっと昔の生活」の気配が何とも言えない。立派な梁や風呂らしき跡、かまどなども、このまま荒れるに任せるには痛々しく勿体ない気がした。この家を過ぎると行き倒れ巡礼碑がいくつも建ててあるところがある。見ず知らずの出身も年齢も事情も様々だが、遠い地から同じように熊野を目指し、時は違えどもこのあたりで力尽きてしまった人たち。まるで一族の墓のように並んで、海を見渡している。庚申碑とキリシタン燈篭を過ぎると間もなく国道に出る。国道に出ると、道を渡って唐突に国道からの登り口になる。とっても無粋な道に見えるが、我々もこの国道を通って二木島に入った。生活者にも古道客にも必要な道だ。いきなりの階段を上ると山とフェンスの間に、かなり窮屈そうに案内板が立っている。読むことはできるが写真に収めるには「これ以上下がれません」という感じになる。ここを過ぎてやっと古道らしい気配を感じ取ることができるようになる。
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山の中は岩だらけ。植林されているところも大きな岩がゴロゴロしているのだ。これでは枝打ちをしたり伐り出したりの作業は大変だろう。そのあと苗木を植える場所はどうするのだろう。一見しただけでは地面らしい部分が見当たらないのだ。表土が流れてしまい、岩がむき出しになっている状態とのこと。手つかずだったからこそ残った熊野古道とも言えるが、このままでは痛々しい。費用が掛かる上、世界遺産登録されたことで木を伐るにも制約があるだろう。何より人手と専門の技術を要する。簡単なことではないが、少しずつでも手入れが進むことを祈りつつ前に進んだ。
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そんな岩だらけのところにも、耕作地として整備された跡がある。立派な石垣が組まれ、岩だらけの斜面は平らにならされている。今はそこにも植林されているが、かつては食料となるものを栽培していたのだろう。
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足元も大きくて立派な石がゴロゴロしている。階段状ではなく岩場のような感じだ。昔のままの状態なのだろう。谷には、普段は水もごく少量か流れていない状態ではないか、とのことだが、今回は数日前の雨のおかげで、しっかり流れている。
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途中から予想通りパラパラと雨が降ってきた。合羽を着て歩いたが、ふと気がつくと雨音はしなくなっていた。我々も濡れないし、雨粒も見当たらない。もう止んだのか?いや、まだ雨は降っているのだが、木々が雨を受け止めてくれるので、我々は雨粒を直接うけずにすんでいる。聞くところによると、ヒノキはかなり雨を防いでくれるそうだ。細かな枝のような葉に水滴を溜めて徐々に先の方に送られるので、すぐには下に落ちてこないのだ。木の枝葉が重なり合っているので、大きな大きな木の傘をさしている状態になっているのだという。実際に木が伐られ、空の見えるところを通ると雨があたる。しっかり降っている。雨降りなのに峠の中だけ静かで雨が止んだような状態になっていた。なるほど?。やっぱり雨の古道もいいもんだ。
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逢神坂の石段は歩きやすく整備されていて、見た目にも美しい。「おおかみざか」の名は、伊勢の神様と熊野の神様が逢引きをしたとか、狼に出会う坂だと言われていたことに由来すると聞いていた。「伊勢の神様と熊野の神様は姉と弟ではなかったか?逢引きというのはどうも考えにくい。きっと狼説が本当だろう。」と一緒に歩いたメンバーで話していたが、あとで説明板を読んで「大亀坂」と呼ばれてもいたと知り、大きな亀が上陸した?この山が亀みたい?と想像してみた。個人的には「亀」説に一票を投じたい。
いつの間にか峠の中は明るくなっている。峠の出口付近で木々の間から段々畑か棚田のような景色が見えてきた。かすむ町も見える。なんだか素敵。
新鹿の町や海岸も見える。新鹿海岸の東屋で昼食にした。雨でも美しい砂浜を見ながら、つくづく「いいところだなぁ」と思う。
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午後からは波田須に移動。波田須の町の中は見るべきものもたくさんあるが、今回は世界遺産登録された300mのみを歩いた。鎌倉時代のものといわれる石畳が有名だが、美しくゆるいカーブを描いて古い部分が、坂の頂上付近には新しく敷かれた部分がくっきり分かれているのも絵になる。古道をはさんで山側には現在も地元の人がお参りする墓地があり、海側に「王子社」があったとされる広場がある。ここを過ぎると紐で縛られたお地蔵さんが祀られている。失くし物が見つからないとき、お地蔵さんを縛って見つかるように祈ってお参りし、見つかったら紐を解いてお礼に参るのだとか。誰が何を失くしたのだろう。無事に見つかりますように。帰りは「かんぽの宿 熊野」に寄って、天然温泉に浸かる。手足も背筋も伸ばして「あぁ、極楽ごくらくぅ?♪」。今回も大満足の古道歩きだった。
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場所 |
交通・駐車場など、下記関連リンクの熊野古道ページをご参照ください。 |
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