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海の道を歩く
2006/05/03
新鹿〜鵜殿村へのシーカヤックツーリング
(
熊野市(旧熊野市、旧紀和町) ) |
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近頃はここ東紀州でもよく見かけるようになったシーカヤック。世界遺産の登録以降熊野古道を歩く人が増え、尾鷲出身の私も伊勢路の大部分は歩いてしまいましたが、今回は熊野の海の道をシーカヤックで歩いてみました。 クルマの屋根に折りたたみの出来るシーカヤックを積み、新鹿ビーチに到着後早速出航の準備です。クルマは新鹿駅に置かせてもらい、シーカヤックで目的地に到着後フネを分解、JRを利用して新鹿まで帰ってくるという計画です。今日はここ新鹿から県境の熊野川を越えて、和歌山県の三輪崎港を目指します。
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午前10時に新鹿ビーチをスタート、天気は上々、南西の風(マゼ)やや強しというところ。とりあえずはのんびりと漕ぎ進み新鹿湾から外海に出て行きます。スタート前から気にしていた南西風が少しずつ強くなっているようで風波(かざなみ)の影響も加わり、いつものようなスピード感がありません。 それでも柱状節理の荒々しい海岸線を眺めながらゆっくりと波田須の集落を通過し猪ノ鼻灯台を巻くと、魔見ヶ島の向こうに鬼ヶ城が見えてきました。ここでバナナを1本食べていよいよ今日のテーマ、七里御浜漕破に備えます。
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英虞湾から延々と続いてきたリアス式海岸が鬼ヶ城を最後に途切れ、海岸線は一変します。熊野市から県境の鵜殿村まで約25km続く七里御浜は、眺望としてはとても美しいのですがリアス式の海岸とは違い、単調な海岸線が続き海が荒れたときに逃げ込む場所が無いのでシーカヤッカーにとってはあまり嬉しい場所ではないのです。 近くで見るのとは違いちょっと大きめの岩にしか見えない獅子岩や、その奥に見える花の窟以外は目立ったランドマークもなく、今日も単調なパドリングが続くのかと思っていたら、にわかに風が強くなってきました。向い風で10?12mはあるでしょうか?急に漕ぐ手がぐっと重くなり、スピードもガタ落ち、陸の景色がなかなか動かなくなってしまいました。さらに風のため波も高くなって、時々フネの舳先でまるで波打ち際のように波頭が砕け、その飛沫が向かい風で頭から降り注ぎます。こう書くと「大変な事態!」という感じですが、シーカヤックをやっているとこんなことはときどき経験するものなのです(勿論、歓迎はしませんが)。傍目には大変に見えるかもしれませんがシーカヤックというフネは実によく出来ていて、波に怯えず、おなかにじっくりと力を入れて落ち着いて漕いでいればそうそうひっくり返るものではない安全なフネなのです。ただやはりこの強風にはほとほと泣かされました。現在位置から判断するとここまでせいぜい時速4キロ程度しかでていません。
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スタートして4時間、このままでは熊野川を越えて三輪崎まで行くのは難しいようです。かといって波が大きく砕ける七里御浜に上陸するのはリスクが大きく、ここはとりあえず前に漕ぎ進むしかありません。「ま、とにかく前に進んでいるのだから。」と気を取り直し2本目のバナナと一緒に羊羹(即効携帯エネルギー)を食べて漕ぎ続けます。このようにフネの上で携帯食を食べるにしても漕ぐのを止めた途端、風で後ろに流され始めるのでそうそうのんびり休んでもいられません。ましてカメラを出して写真を撮るのは至難の技で、最も海が荒れた2時間ほどは全く撮影できませんでした。
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午後3時、ヒーヒー言いながらもやっとこ阿田和沖を通過。この時刻にこの位置では日没までに鵜殿まで行けるかどうかでしょう。そこで「鵜殿港を目指し、それがムリなら暗くなる前に七里御浜に上陸強行。」と計画を変更し、3本目のバナナを摂ってもうひと踏ん張りです。肩の筋肉が痛みはじめましたがこれは無視、無視。 午後4時、時折波を被りながらもようやく道の駅ウミガメ公園沖を通過、鵜殿港の入り口灯台がハッキリと見えてきました。さらに漕ぎ進むと防波堤の波裏に入ったためか、風はともかく波は収まってきました。さあ、ここからラストスパート、嘘みたいに強い向かい風の中、じりじりと離岸堤を回り込みなんとか鵜殿港の船溜まりに入りました。スロープにフネを寄せようやくゴールです。時刻は午後5時ちょうど。今日は海の上に7時間いたことになります。漕行距離は30キロ、普段なら遅くとも時速6キロは漕げるので、風の影響の大きさを再認識した今回のツーリングとなりました。 さて、このあと近くのスーパーで買った缶ビールをフネに凭れて一気飲み。かーっ!何を隠そう私はこの瞬間のためにシーカヤックをやっているのです。ひとやすみした後フネを分解し、持参した買い物カートに積んで駅まで歩きJRで新鹿駅に帰りました。
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シーカヤックで外海を漕ぐといつも思うのですがリアス式海岸の岩肌も、波が砕ける七里御浜も人の手が入っていない自然海岸です。当然昔の帆掛け舟や伝馬船も自分と同じ景色を見ながら海の道を渡っていった筈で、私はそういう「時間」を感じるのがとても好きです。エンジン付の船ではなく何故かシーカヤックに乗っているときにふとそんなことを思ったりするわけで、わたしにとってシーカヤックというのは海を旅する道具だけでなく時間も旅する秘密のタイムマシンでもあるのです。
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場所 |
新鹿ビーチは国道311号線沿い |
交通 |
JR東海紀勢本線新鹿駅から徒歩5分 |
駐車場 |
海水浴シーズン以外は駐車可 |
新鹿の施設 |
トイレ、東屋等あり |
鵜殿港 |
国道42号線沿い |
鵜殿港への交通 |
JR東海紀勢本線鵜殿駅から徒歩5分 |
注意 |
熊野灘の外海はシーカヤックにとってリスクの大きい海域です。ツーリングには充分な準備をお願いします。 |
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