熊野市有馬町の市歴史民俗資料館で「昔からの教科書展」が始まり、市内外から大勢の閲覧者や歴史研究かが訪れている。 会場には日本に学校制度が出来た明治五年からの教科書約百二十冊を展示。教科書は時代を映す鏡とも言われ、戦前の国定教科書、戦後の文部省検定本など当時の社会情勢が伺える。昭和六年からは「満州事変」を経て、国語の教科書は「ハト、マメ、マス」の平和調から「サクラガサイタ、ヘイタイススメ」と戦争へ進む流れが現れている。 今回展示されている中で最も目を引くのは「すみぬり教科書」と呼ばれるもの。これは昭和十九年に発行された世界史の教科書で、敗戦後、連合国の意志を踏み教育行政当局などの指示で不都合な部分を墨で塗りつぶされた。消された主な内容は勝者であるイギリスやアメリカの中国侵略、植民地政策についての記述部分という。 このほか、寺子屋時代の教科書や江戸時代の百科事典なども展示。流れ谷歴史民俗資料館(小西清次館長)かやの木資料館(尾中鋼治同)の貴重な資料も並べられている。速水館長は「ごゆっくり鑑賞していただき、教科書を通じて時代の移り変わりに思いをはせて頂ければ」と話している。展示は11月7日までで閲覧可能時間は午前9時から午後4時。月、木曜休館。
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