9月18日熊野市紀南県民局において、七里御浜研究会主催「七里御浜海岸の自然再生を考えるシンポジウム」が行われました。このシンポジウム開催には地元の方も多く参加し、浸食が著しい井田海岸の昭和41年から現在までの浜が変化していく状態がパネル展示もされました。 午後2時より行われたシンポジウムは地元の方も含め100名以上もの参加があり、会場も満席に近い状態になりました。京都大学名誉教授今本博健氏による開会の辞、河上敢二熊野市長、新宅考嗣士紀宝町長よる挨拶ではじまりました。 基調講演で宇多高明氏は「七里御浜海岸の浸食の原因と長期的対策」と題し、七里御浜の現状、対策などについて熱く語り「七里御浜海岸の浸食はダムや港の建設などの影響と考えられてきたが、他にも様々な要因が考えられます。調査によると井田海岸では特に浸食が著しいが、尾呂志川河口付近から北の前浜は広くなっていて浸食があまり見られない。このような事からも熊野川事態の砂利の供給量に何らかの変化が生じているのかもしれない。また浸食の防止のために突堤をつくると他の場所にも影響し、しょうぎ倒しの状態になってしまいます。浸食の問題は地域の生活に深く関連おり、子供・孫などの代までかかっても、自分の人生より長いスケールで考える長期的な対策が大事です。」とのように述べられました。 杉本隆成氏は「熊野灘に来遊する魚たちと沿岸海洋環境」と題した講演を行いました。熊野市出身である杉本氏は海洋学の面から、熊野灘の漁場や、人口リーフ等の対策について述べられました。 引き続き行われたパネルディスカッションでは 水谷法美氏(名古屋大学教授) 古川正和氏(紀南漁業組合前組合長) 花尻薫氏(七里御浜研究会代表、熊野の自然を考える会代表) 宇多高明氏(土木研究センターなぎさ総合研究室長) 杉本隆成氏(東海大学教授、東京大学名誉教授) のパネリスト方々が様々な観点から、現在の海岸の状況、七里御浜の特徴、今後の対策について語りました。「5つの自然百選に選ばれていながら浸食という問題を抱えていること、七里御浜は台風がくる度に砂利が流されることもあったが、しばらくたてば元の浜に戻っていた。このような昔の健全な状態に戻すためには短い期間での取り組みよりも、自然再生を考えた長期的な無理をしない対策が大事です。」といった話は地元の方々も深く考えさせられたのではないでしょうか。 質疑応答では一般の方から人口リーフや、長期的対策などについて質問が寄せられ、これらの問題点についてもパネリストから丁寧な応答がされました。 また「今昔ものがたり写真展」は同1階ロビーにおいて9月17日と18日二日間にわたり、熊野市鬼ケ城付近〜井田海岸周辺の明治〜現在の七里御浜の写真パネルが展示されました。こちらも多くの方がみえ、鬼ケ城辺り浜辺で漁の賑わう風景、石拾いの風景、現在の比較写真、また台風により堤防が倒壊してしまった井田海岸の様子などを感慨深くご覧になっていました。
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宇多高明氏の基調講演。スライドなども交え現況を詳しく話されました。 |
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杉本隆成氏の基調講演。熊野灘の漁場を、他の地域と比較しながらの分析。 |
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パネリストの方々は専門的な内容を分かりやすく説明され、質疑にも柔軟な応答をされました。 |
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地引網がおこなわれていた井田海岸はテトラポットが並び、浜がほとんど見られない状態です。 |
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「今昔ものがたり写真展」昔の七里御浜の様子の話をされている方もみえました。 |
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