平成24年12月9日(日)三重県熊野市木本町の紀南ツアーデザインセンターにおいて『古式・トチ餅作り』〜おいしい山の食文化を受け継ぐ〜が開催されました。 この日は、11名が参加し熊野市飛鳥町で昔ながらのトチ餅を毎年作り続けている竹平巨嗣さん、禮子さんご夫妻をお招きして講座がスタートしました。 10時。紀南ツアーデザインセンターに集まった参加者の方を、竃(かまど)のゆげが出迎えます。 “古式”にこだわり、紀南ツアーデザインセンターの竃を使って竃用の木製コシキ(蒸し器。現在は金属製のものが多い)で餅米とトチの実を蒸します。 参加者の方は、以前、このトチ餅作りにご参加くださった方以外全員が初体験です。 このたびの講師、竹平さんご夫妻の昔ながらの暮らしを大切にしながら、現代式に対応している竃や餅つきのある生活をご紹介し、竹平さんからは、トチの木やトチの花、実についての詳しい講義がありました。 そして、トチ餅を搗くまでにかかる、約1ヶ月ものトチの実の加工の工程をご説明くださいました。 トチの実を山で拾うことから始まり、トチの実のアク抜きなど約1ヶ月間という手間のかかるトチ餅作り。トチの実は、食料が安定していない時代の大切な山の保存食でした。この工程をふんでおくと、5年でも10年でも保存がきくのです。冷蔵庫などが無い時代の貴重品です。 そして、なによりも、この“手間ひま”がなんとも言えないおいしいトチ餅になる、と竹平さんはおっしゃいます。 講義でトチの実加工の手間を学んだ後、ちょうど餅米が蒸しあがり、ご参加の方みんなで餅つき準備です。 まずは息がぴったりな竹平さんご夫妻にトチの実がふんだんに入った餅を搗いていただきます! 参加者も餅つきに精を出されました。こんなに黄色が強く出る、たっぷりとトチの入ったお餅は初めてですが、これが竹平流。昔、集落の年配者から聞いた作り方です。 ねこ(長く形どった切り餅用のお餅)にしてあるものは左がトチ餅、右がキビ餅です。キビは竹平さんが毎年育てているものを、石うすで挽いて粉にして持ってきてくださいました。残りは丸餅にしてあんこを入れます。皆さんとても真剣。そしてとっても楽しそうにしてくださいました。 出来上がりをさっそく試食してみます。「搗きたてもおいしいが、搗きたては生餅で食べてみて、火で香ばしくあぶるには搗いて1日2日ほどした餅がええ。」と竹平さん。2日前に竹平さんと共に搗いておいたトチ餅を火鉢であぶってみます。 手作りでは、トチの粒が不揃いに残るのもおいしい味わいの一つです。 搗きたてのトチ餅、キビ餅、そして禮子さんが手早く炊いてくださった、トチ餅によく合う熊野番茶の茶粥をたっぷりいただき、竹平流、古式・トチ餅をじっくりと堪能することができました。 参加の皆様からは、 「買うものとはまた違う、ぜんぜん別もののトチ餅だった!添加物のないすばらしい食。」 「トチの味を本当に味わえた。手作りならではの味。妹が山間部に居る為、トチの実があれば作ってみようと思う。」 「以前参加させてもらったが毎回新鮮な体験。火を使った暮らしに感動を覚える。デザインセンターの火鉢に憧れてついに祖母から譲り受けてきた。」 「家に、5年前拾ったトチの実が眠っている。明日から早速作って、日のめをみせたい!」 「昔の食生活を伝える場が少ない中、こういう文化をこのように伝えている方がいるというのがうれしい。昔ながらをずっと続けている竹平さんに敬意を表する。」 等などのご感想をいただきました。 “古式”、トチ餅作りに学ぶ、山のこと、季節のこと、人の思うようにならない自然の摂理やトチの実拾いに熱中してしまう楽しさ、そして特別な味わい。それらを、竹平さんのトチ餅とともにしっかりお土産に持ち帰っていただき、本日の講座が終了しました。
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