● 感 想
熊野信仰の始源について考察する第1章、熊野のシンボル的存在となっているヤタガラスについて考察する第2章、ヤタガラスの足がなぜ3本なのかを考察する第3章、山伏と天狗について考察する第5章など、熊野への興味を深めてくれる全10章。
特に面白いと思ったのは第2章。誰もが一度は疑問に思う、「なぜ神の使いがカラスなのか?」についての考察。生物的なカラスの特性を踏まえた上で、環太平洋という広い視点からシベリアのワタリガラスなど類似の事例を挙げている。それは偶然の一致ではなく、カラス(ワタリガラス)に関する信仰を持っていたモンゴロイドが太平洋岸を移動していくのに伴い、共通した信仰が広がっていったと推察している。熊野の海を流れる黒潮に流され各地で暮らすことになった人たちが、土地を変えても同じような信仰を持ち続けていたのだろうか。この説が事実かどうかは分からないが、想像すると楽しい。また、ヤタガラスの足はなぜ3本あるのかを考察した第3章も面白かった。
熊野に興味を持つ人にとって、オススメの一冊。 |