● 感 想
熊野三山をはじめ、熊野で神の使いとされている3本足のヤタカラスを切り口にして、熊野信仰の源流を太陽信仰ではないかと推論する第一章と、全国各地にある弓神事・オビシャと太陽信仰の関係について考察する第二章からなる。
「土着の太陽信仰を力強い基盤にして、太陽の烏である八咫鳥の信仰が熊野三山に生まれ出たといえるのではあるまいか」という結論になっている。熊野の自然崇拝の中には、当然に太陽への信仰もあるだろうから、それなりに納得できる説明のような気がする。
また、中央の支配者から位置づけられた熊野信仰ではなく、「熊野に生きてきた人々の。日々の生活に息づいていた、素朴な信仰とはどんなものであったのか」という視点は、現在でも興味深い。世界遺産登録されたのは、まさにそういった素朴な信仰が支えてきた文化的景観が評価されたためではないだろうか。
第二章の弓神事・オビシャに関する考察も面白い。東紀州にもいろんな弓神事があるが、一般的な知識として的=太陽、太陽を射る=太陽の新生を図る、ということを知っていると、神事におけるしきたり・所作などの意味が見えてくるかもしれない。 |