● 感 想
みえ熊野学研究会が企画・発行・編集している「みえ熊野の歴史と文化シリーズ」第1弾。道中記において、熊野詣や東紀州地域がどのように登場したか、ごくシンプルに記録されている。記録されていることは分かるとしても、あまりにシンプルすぎるので、「そういう道中記の記載から、当時の東紀州地域がどんなところだったのかをより深く考察すべきではないのか?もう終わり?」という物足りなさを感じる。
全16編の中でも、三重大学人文学部 塚本教授の「道中記文化より見る熊野街道」が印象に残っている。塚本教授が指摘するように、熊野信仰とは何か、なぜ熊野が多くの人を惹き付けたか、熊野詣の実際はどんな風だったか等々、根本的な事実を押さえていないと、浮ついた熊野古道ブームで終わってしまう。その論文が書かれて数年が経過しているが(※感想記録=2008年1月)、塚本教授や熊野学研究会などの継続的な研究によって、地域内外でその理解が進んでいるように思う。 |