藤原定家が後鳥羽上皇の熊野御幸に随従したときの記録『熊野御幸記』の記述に沿って、熊野詣の様子や街道沿いの伝承などを紹介する、熊野案内記。第1章から第7章は、『熊野御幸記』に沿って熊野詣の案内記的な内容。第8章は、熊野信仰の根源となる伝承や現在も残る熊野の祭りなどを通して、熊野という地域を紹介している。
第1章 聖地熊野三山 第2章 熊野三千六百峰への道 第3章 南無日本第一霊験熊野大権現 第4章 花山院の熊野行 第5章 補陀洛渡海 第6章 那智妙法山阿弥陀寺 第7章 大雲取小雲取越え
第8章 天竺摩竭陀国
● 感 想
熊野についての豊富な知識を有する著者ならではの、街道沿いに残る伝説が次々に登場する文章は、実際に熊野古道を歩いて語り部から話を聞くような感覚になって、楽しく読むことができた。
また、藤原定家が体調を崩しドタバタ劇を展開しながら熊野へ至った様子や、自らの昇進を熊野の神へ願ったものの、かなえられなかった様子が、愉快に描かれている。
そうした案内記としての第1章から第7章に加えて、第8章では熊野信仰のはじまりについても考察している。この一冊を読めば、熊野がどういった地域なのか感覚的に掴めるのではないかと思う。 |